三途の川の話。
2023.04.03
 入浴介助で二人きりになったとき、H子さんが

 悲しそうな顔で「どうして私は死ねないの?」と聞いてきた。

 終末期の診断も受け、身体的にしんどいんだろうな、と思うからこそ

 間に合わせ的な返事はしたくない。

 昨年くらいまで「私、死なないような気がする♪(笑)」というH子さんを知っている分、

 切なかった。

 「まだ、(生きて)やることがあるんでしょう」と答えながらも

 内心(それって何?と思っている自分がいて)、

 「神様が…」と言いかけた時

 思い出した!!

         

 「H子さん、子供の頃、三途の川の前まで行ったんでしょ!?」

 すると、

 H子さん、くるくるのかわいい目を大きくして面白そうな表情をして笑って

 「そう!」

 「流れが速くてね!」

 「きれいなの!」

 「無音なの 何も聞こえないのよ(笑)」と楽しそうにすらすら話す。

 ただただ、私は聞くばかり。

 でも、…楽しい!

 「(川を)渡ろうと思ったら・・・”来ちゃダメーーー!”って聞こえてきて。

 目が覚めたら、お医者さんがご臨終ですっていうところで!

 (お医者さん)びっくりしてんの!面白かった(笑)」

            

             

  「それって誰の声?」と私が質問すると

  「神様じゃない?」とH子さん。

  「ほら、やっぱりH子さんは”神様に選ばれし”人なんだよ!」と言うと、

  嬉しそうな表情。私も嬉しかった。

            

 この仕事に携わると、必ず関わってくる問題。

 お見舞いに行った時、

 「死ぬのってこんなに苦しいんですね」と言われて、何も言ってあげられなかった

 経験不足の私がいた。

 「(自ら死を選ぼうと思ったけど)あとに残される人のことを考えたら出来なかった」と泣かれた時にも

 どうやって言葉を返せたら、気持ちが軽くなるのだろう?

 気持ちが軽くなるような返答はあるのだろうか?と自分の至らなさを痛感するばかりだった。

 今日のH子さんには、少し気持ちを紛らわせる言葉をかけられたかな?

 てまりを利用して頂いた5年の月日で、H子さんと沢山おしゃべりをして、

 いろんなH子さんを知ったらから、掛けられた言葉だなと思った。

           

 午後、桜を見に行った。

 満開の桜を見たH子さんが

 「わぁーきれい!」「長生きしそう♡(笑)」と言ってくれてほっとした。

 てまりに通えなくなるその日まで、

 楽しい時間を過ごしてほしい。
2023.04.03 15:53 | 固定リンク | 未分類

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